あなたの声をきいてあなたの瞳の揺らぎを見てその唇にくちづけをするのがぼくの望み




「仁王先輩、なんであの人と付き合ってるんすか?」

朝練が終わって部室で着替えてる時だった。
赤也が思い出したように唐突にそんなことを聞いてきたのは。

「言っている意味がわからんぜよ」

そう答えてネクタイを締めれば赤也は唇を尖らせて「だから」と続けた。

「仁王先輩の彼女、先輩、でしたっけ?俺、なんで仁王先輩が先輩と付き合ってるのかわからないんすよ。ぶっちゃけ仁王先輩、あーゆー人苦手でしょ?」

赤也の言いたい事が何となくわかった。
俺に俺の彼女、は似合わないと言いたいのだ。
俺は周囲が俺に対して持つイメージというものを理解しているから、と俺が付き合っていることに疑問を持つ人間が少なからずいることを知っている。
美しく毒々しい、どこか影がある妖艶な女を引き連れていそうなんじゃろ?わかっとるよ。
俺は小さく息を吐き赤也を横目で見た。
恐らく俺の瞳には呆れが見えただろう。
赤也はどこか不満そうだ。
そんなに自分の中の“仁王先輩”のイメージと違うのが嫌なのかねぇ。

「俺はのことが大好きなんじゃ。だから付き合うてる。それだけぜよ」

それだけ言って俺は鞄を手に部室を出る。
赤也の「えー」という不満が聞こえた。










と何故付き合ってるのか、それを聞かれたのはこれが初めてではない。
もう何回も聞かれた。
まぁ、俺みたいな人間がみたいな人間と関わること自体珍しいじゃろうから不思議ではない。
でもだからと言って「付き合う人間は選べよ」的な視線を向けなくていいじゃろうに。
向けられる側はたまったもんじゃない。

「雅治ーおはよー!」

校舎に入ろうとした時だった。
その無駄に明るく無駄に元気で無駄に間延びした声が聞こえたのは。
そしてその声が聞こえたと思ったら背中に圧し掛かる重力。
必然的に俺は前屈みになる。

「はいはい、おはよう」

俺は背中に乗る人物、噂の俺の彼女、に朝の挨拶を返す。
だるいのはしょうがない、朝練後だ。

「雅治の背中は温かいね。猫みたい」
「・・・にゃあ」
「ふふふっ」

未だに俺の背中に乗りかかってるの体温の方が俺よりも高いと思ったのは心の内に秘めておこう。
は子供体温なんじゃ。
そしては「あ、そうそう」と何かを思い出したように呟いた。
俺は背中から降りるのかと思ったがは降りることなく、寧ろ体重を更に掛けて自分の顔を俺の顔の真横に突き出してきた。
肩にの顎が乗る。
ちなみに俺とはまだ校舎に入れていない。
俺達を抜かして校舎に入る奴等は俺達を見て見ぬフリ。
それにしても・・・朝から元気じゃのう。
超至近距離で登校中に見た黒猫の話をするに自然と目が細くなる。
顔面の筋肉が緩んで口端が上がる。
もしもこの女がでなかったなら、朝から元気じゃのう、とうざがって無視している。
つまるところこの女がだから愛しさを感じてるのだ。
赤也にも言ったが、俺はが大好きなんじゃ。

「仁王君、さん。予鈴が鳴ってしまいますよ。そろそろ校舎に入られてはいかがです?」

俺との朝の絡みを邪魔したのは他でもない、柳生じゃった。
風紀委員として見逃せないって感じかのう。

「あー、はいはい。わかった。、そろそろ降りんしゃい」
「えー、ヤダ」
「柳生が睨んどる」

睨んでません、という柳生のツッコミは無視。

「やぎゅー君に睨まれても痛くも痒くもないもん」
「そんなこと言っとると柳生からレーザーが出て体の真ん中に大きな穴が空くぜよ」
「えっ、嘘!?」
「本当じゃ。柳生の眼鏡を見てみんしゃい。外したらレーザーが出るようにしか見えないじゃろ」
「確かに・・・」

何を言っているんですか、とでも言おうとしたのであろう柳生にアイコンタクトで黙っておれと命じる。
柳生は不服そうに眉を寄せたが、開きかけた口を閉じ、の視線をその眼鏡に浴びる。
俺は胸の奥がもやもやするのを感じた。
に見つめてもらってる柳生に嫉妬。
・・・こんなくだらないことで嫉妬できるくらい、俺はが大好きなのだ。

「やぎゅー君って実は怖かったんだね」

柳生から視線を外したは名残惜しそうに俺の背中から降りた。
名残惜しそうにしてくれただけで柳生への嫉妬などなかったことになる。
特にの「もっと雅治とくっついていたかったなぁ」なんて呟きを聞いてしまったら、俺の浮かべていた微笑は一瞬でニヤケ顔になるんじゃ。

「仁王君、残念そうな顔をするか萌えるかどっちかにしたらどうです」
「うるさい」
「雅治、早く教室行こ」
「ああ」
「照れ隠しの拗ねた顔からこうも早く優しい顔になれるとは・・・愛の力でしょうか。これはまさに、」
「柳生、ポエムは学校で作らなくていいからな」

こうして俺とと柳生の3人で校舎に入った。

「やぎゅー君の下の名前って何だっけ?」

下駄箱で靴を替えているとがふとそんなことを言い出した。
俺が驚いている間に柳生は「比呂士です」と動揺もせずさらりと答えた。

、なんでそんなこと聞くんじゃ」

少し焦って問い詰める。
は「んー」と唸りながら上履きの踵を直して言った。

「ひろし君って呼ぼうかなぁって思って」

その瞬間、びっしゃーんと俺に雷が落ちた。
そんな気分になった。
やっぱりそうなのか!?と当たって欲しくない予想が当たってしまってショックだったんじゃ。
は人見知りしない明るい子で、仲良くなった人は名前で呼ぶという決まり事みたいのを持っていた。
だから彼氏のダブルスパートナーの為よく話すようになり親しいと言っても過言ではない仲になった柳生を名前で呼ぼうと思うのも無理はないと思う。
でも、たとえその馴れ馴れしさがの魅力のひとつだとしても、そればっかりは俺の中で許せないものがあった。

「柳生を名前呼びなんて、俺が許さん」

俺はしっかりの目を見て言った。
は「どうして?」と首を傾げる。

「やぎゅー君とはもうお友達だし、いつまでも苗字呼びってなんか他人行儀じゃない?」

の、そういう所も好きなのだけど、やっぱり俺は嫌なんじゃ。

「俺以外の男を、名前で呼んで欲しくないからじゃ」

それが柳生を名前で呼んで欲しくない理由だと続ければ、は一瞬フリーズした後ぱっと驚いた顔になったかと思えば赤くなって「お、おお」とよくわからない感嘆の声を漏らして最終的には笑顔になった。
なんじゃこの可愛い生物は。

「わかった、なら雅治以外の男の子は名前で呼ばないことにするね」
「ああ、そうしてくれると助かるのぅ」

よしよしとの頭を撫でていたら予鈴が鳴った。

「それじゃあさっさと教室に行くか」
「うん」

気付けば柳生は(空気を読んだのか、予鈴が鳴る前に着席しなければとでも思ったのか)もうそこにはおらず、俺との2人で教室に向かった。
やっぱり2人っていうのはいいのぅ。










それから少し時間は経過し、2限目の授業が終わった数秒後のことだった。

「あれ?仁王君、シャツの袖のボタン取れてるよ」

そう言ったのは前の席に座る少々ケバい女で、

「私ソーイングセット持ってるから縫ってあげようか?シャツ着たままでも手首に針刺しちゃったりはしないから!」

そう言ったのも前の席に座るかなり五月蝿い女だった。
「私気が利くでしょ?意外と家庭的で驚いた?」とでも言いたげなそのむかつく笑顔に俺は苛々する気持ちを隠そうともせず「いや、いい」と憮然とした態度で答えた。
すると前の席に座るうざい女は「いいからいいから。これでも裁縫は得意なの」とまるで俺が照れて遠慮しているかのような態度で出てきた。
俺は何も言わず席を立ち、自分の席に座って女友達と談笑しているの元へ行った。
俺がに近付くのを感じ取ったの友達はすぐにから離れる。
は俺が目の前に立つと先程まで友達に見せていたままの笑顔を俺に向けた。
俺はにしか見せない微笑みを浮かべると丁度空いていたの前の席に座って、腕をの机の上に立てる。

「ボタン、取れてもうたんじゃ。付けてくれんかのぅ」

は袖口を見て「あ、本当だ。取れてるね」と言い余計なことは何も言わず鞄の中からソーイングセットを取り出した。

「着たままだと刺しちゃうかも」
「脱いだ方がよか?」
「ブレザーはともかくシャツは脱がない方がいいよね」
「俺も流石に教室の真ん中で上裸は嫌じゃ」
「でも手首針で刺しちゃうかも」
「ええよ。別に」
「えー」
がつけてくれる傷なら、別にええよ」

は何それーと笑ったが照れているのは一目瞭然で、ああ可愛いなぁ、なんて思った。
そうして休み時間中、真剣な面持ちで俺の手首を刺さないようにボタンを付けるを俺はずっと見つめていた。
きっと俺の目元は優しげで温かかったことだろう。
俺の心がとても優しくて温かい気持ちで溢れていたから。

「・・・できた!」

休み時間があと1分で終わるという時だった。
は明るい笑みを見せたかと思ったら、自分が今縫い付けたばかりのボタンを見て眉尻を下げた。

「不恰好になっちゃった」

少しだけ糸で巻いた部分が太かったし玉止めも大きかったが、そんな気にする程ではない。
というか俺はに付けてもらったというだけでもう充分じゃ。

「綺麗にできとる」

そう微笑みかけたら「でも」と言いよどむ

「俺はにボタン付けてもらえて幸せ者じゃ」

ぽんぽんとの頭を軽く叩いた。
はそれでも唇を尖らせる。

「もっと裁縫上手な子に頼めばいいのに・・・」

どうやらは自分の想像以上に上手くボタンを付けられなかったらしい。
俺からしたら結構上手な部類だと思うのだが。

以外の奴に頼むなんて考えられないのぅ。俺が自分の体に触れるのを許すのはだけじゃ。以外に触れられとうない。ちなみにに俺以外の奴が触れるのはすごく嫌じゃ」

そこで3限目の始まるチャイムが鳴った。
俺は「ボタン、ありがとさん」との頭を撫でてから自分の席に戻った。
は「えへへ」と嬉しそうにニヤけていた。
その数秒後「あっ、次の授業の準備してない!」と慌てていた。
慌てすぎて筆箱落とし中身をぶちまけていて俺が拾うのを手伝った。

「ありがと、雅治!」

ぱあぁっと大輪の花が咲くような笑顔に俺の顔はまた緩んだ。










そして放課後、部活中。

「雅治ー!」

フェンスの向こう側からよく知る声が聞こえた。
だ。
丁度俺は練習メニューが一通り終わった所だったから真田に何か言われることもなくフェンス越しではあるがの元へ行けた。

「見て見て、新作ポッキー!友達がくれたんだぁ。マンゴー味だって」

がじゃーんと言って見せ付けてきたのはお菓子だった。
ご丁寧にそのパッケージには「季節限定」の文字がプリントされている。

「雅治に1本あげるね」

は新作お菓子にテンションが上がっているらしく目が輝いていた。
自己表現が素直な彼女に俺は笑みが深まる。

「はい、雅治」

はポッキーをフェンスの隙間から差し込んだ。
俺は迷いなどなく、ほんの少し腰を屈めてそのポッキーを口に含んだ。
が、しかし。
その行動に驚いたのか「え!?」という大きな声を出した、・・・赤也が。
は大した動揺もなく、勿論少し離れた所で大声を出した赤也に目をくれるはずもなく、楽しそうに笑うばかりだ。

「もう1本いる?」
「おん」

また、いわゆるあーんというやつをする。

「美味しい?」
「あんまり」
「え、マジ!?」

は「嘘ー」と少し泣きそうな顔をする。
楽しみにしていた新作お菓子がイマイチって言われたら、そりゃあのぅ。
けど。

「でもが食べさせてくれたから美味しかった」

俺が微笑めばは「えへへ、そっか」と照れ笑い。

「じゃあいつも通り教室で部活終わるの待ってるから!」

は俺に背を向けた。
少しずつ、離れていく背中。
俺はその背中を見てはっとあることに気が付く。

「新作ポッキー、くれたの男か?」

少し声を張って、少し遠くのに向かって言えば、は立ち止まって振り向いた。
笑顔だった。

「そうだよー」

その笑顔を見て、ただの男友達なんだとはわかったけど、面白くない。
俺の知らない所では男と話して、男に新作ポッキー貰ったんじゃ。
面白くない。
実を言うとその新作ポッキー、今日の帰りにでも買ってあげようと思ってたんだから、尚更面白くない。

「その男、もしかしてまだ教室か?」
「うん、暇潰しだって」

つまり俺が部活している間はずっとその男と一緒・・・。
駄目だ。

「・・・ここにいんしゃい」

は俺のやけに真剣な様子に少し驚いている。

「え、なんで?」
「ええから」
「でも、」
「俺の知らない所で俺以外の男といて欲しくないって思うんは、いけないことかのぅ?」

どうやら俺はかなり寂しげで不安な様子だったらしい。
はポッキーが美味しくないと言われた時以上に泣きそうな顔をして、「いけなく、ないよ」と囁いた。
次の瞬間には笑顔になったが。

「鞄、取ってくる!」

はそう笑って校舎に走って行く。
なんじゃ、もう少し一緒にいたかったのに。
でものことだから、きっと走ってまたここに来るのだろう。
が俺の為に息を切らして来てくれることに心が弾む。
そうして校舎の中に消えるの背中を見送った時だった。

「仁王先輩!」

赤也がやかましく話し掛けてきた。

「なんじゃ赤也。人が好きな女のこと考えてる時に」
「ああ、すみません。じゃなくって、何なんすか、今の!」
「彼女じゃけど?」
「それはわかってます。俺が言いたいのはそうじゃなくて」
「何ぜよ?」
「あーん、とかあんなバカップルっぽいことするとか意味わからないんすけど!」

赤也は不満そうに唇を尖らせ、不服そうにむすっと視線を地面に向けた。
あーもー、朝といい何なんじゃ。

「赤也、お前・・・俺とが羨ましいんか?」

半分本気で半分冗談。
赤也は単純で真っ直ぐな奴だから「違います!」と全否定する。
でもその拍子に俺と目が合った。
直ぐに逸らしたが。

「仁王先輩、あの人といるとキャラ違くて吃驚しただけです」

先程と変わらずムーーっとした態度で赤也はぼそぼそとそう呟いた。
そして続ける。

「表情コロコロ変わるし、なんかめっちゃ優しい笑顔見せてるし、そうかと思えば切なそうにするし。あんな仁王先輩、初めて見ました」

赤也が初めて見る姿の俺に何を感じたのは正確にはわからない。
幻滅したのか、驚嘆したのか、歯痒く思っているのか、嬉しいのか、珍しいのか。
赤也自身、自分の気持ちがよくわからないらしく、

「なんか本当にあの人のこと好きなんだなぁって思ったりするんすけど、そんな仁王先輩、俺の知ってる仁王先輩じゃなくて信じられないし、だからといって仁王先輩のあの態度が演技とは思えないし、なら本気ってことじゃないですか。でも先輩みたいなすんげー明るくてアホっぽい女好きになるとかやっぱり仁王先輩らしくなくて、えーって感じで、なんかもうよくわからないっす!」

と、捲くし立てた。

「赤也、朝も言ったじゃろ。俺はが大好きなんじゃ。だからにしか見せない表情が沢山あるんよ。それだけじゃ」

赤也は顔を上げて、ムスッとしていた表情を徐々に柔らかくし、最終的には笑った。

「ま、知らないけど仁王先輩は先輩が大好きってことで納得っす」

赤也はここでやっと俺がを本当に大好きなんだと理解したらしい。
もうこれで変な質問をしてきたり怪訝な目で見てきたりはしないだろう。










そういえば、赤也とは少し似てるのぅ。
感情を表にすぐに出すところなんか、特に。
部活終了後、部室で着替えている時に赤也にそう言ったら「仁王先輩も先輩の前では素直っすよね」と返された。
ちなみにはあの後鞄を取ってテニスコートに戻って来た。
息を切らしていたことに嬉しさが込み上げたのは秘密じゃ。

「やっぱりまだ少しだけ信じられないっすよ、俺。仁王先輩があんなに感情剥き出してるの」

赤也は朝のような不満気な様子はなく、寧ろ俺をからかっているような冷やかしているような言い方をした。
俺はと言えば「そうじゃのぅ」と適当に返事をする。

「あ、やっぱり先輩の前じゃないといろいろ誤魔化すんすねー」

赤也はニヤニヤと意地悪く笑う。
俺はそんな赤也のおでこを軽く小突いてについて考える。
本当に俺は、に対してだけは感情表現、特に表情の変化が豊かだ。
それはに感化されたと言ってもいい。
が思ったことをそのまま顔に出すから、俺も自然とそうなってしまう。
が俺の感情をごく自然に引き出すんじゃ。
いや、引き出すというよりも導くといった感じかのぅ。
気付いた時にはポーカーフェイスなど綺麗に消え去っている。
けれど以外の人間の前だと特に何も感じることなくぬらりくらりとやり過ごしている。
に出会う前は、それが普通じゃったし、自分は感情の波が激しくないのだと思い込んでいた。
でも違ったんじゃ。
俺自身気付かなかったが、俺の中ではいつも感情がコロコロ転がっていて、10代の若者らしい実に落ち着きのないものだった。
落ち着いてるとかクールとか謎めいてるとか、そういうイメージは虚構に過ぎないことを、俺はに出会って知った。
どういう理屈なのかはわからないが、だけが俺の感情を見つけることができるのは事実だ。
だから俺はが大好きだ。
もしかするとが大好きだからそうなのかもしれないが。
まぁ、そんなもどっちでもええじゃろ。
を待たせるのは忍びないし、さっさと帰ろう。

「そんじゃ、お疲れさん」

まだ部室に残っている面子にそれだけ声を掛けて部室を出る。
俺の足が向かう先は勿論、大好きな彼女。

「待たせたのぅ、
「そんなに待ってないよー。空見てたし」
「空?」
「うん。ほら、あの雲、なんかやぎゅー君に似てる!」

が指差した先の雲は(どう見たら柳生に見えるのか不思議だったが)丁度出始めた星を隠した。

「・・・言われれば、柳生っぽいの」
「でしょー」

これがでなければ適当にあしらってた。
でもだから。
だから、俺は微笑んでやれる。
気を遣ったわけではない、ただ愛しくて。


「何?」

沈みかけの夕陽に照らされるの笑顔。
俺もどうしてか笑顔になる。

「後でキスしよな」

は面白いくらい顔を赤くした。
したいと思ったから、言っただけなんだけどな。

「キ、キスしたかったらぬいぐるみにでもしてなさい!」
以外とキスとか、例え無機物でも考えられん」
「え、」
にしか、キスしたいと思わんぜよ」

何それ、と俯いて呟く彼女の手を引く。
手だって、以外と繋ぎとうないし、にだって俺以外の奴と手を繋いで欲しくない。
だから、この子がという人間だから、だから俺は、こんなにも優しく笑えるんじゃよ。


「何?」

「大好き」

だけだ。


1周年と5万打リクエスト企画より。

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